ちいさなおうち

ギ、ギ~!バリッ、ベリッ、メリッ!

昨日、仕事が終わり、駐車場に車を止め、

マンション入り口に向かおうとしたときのことです。

駐車場の柵に面して建っている小さな家から、ただならぬ音。

植え込みで1階部分はよく見えないのですが、

2階の窓は全開され作業着姿の人が壁をはがそうとしているような。

どうやら、リフォームか建て替えのための解体中のようでした。

車を出し入れする時にいつも目にしていた小さな家。

クリーム色の壁もまだきれいで、そう古くは見えなかったのですが、

それなりに年月を重ねていたのでしょうか。

ギ、ギギ、ギ~。

メリメリ、べリッ、バキッ、ガシャーン。

壊される家の立てる音が耳について離れません。

なんと物悲しい、なんと哀切な音でしょうか。

家が泣いている。

喉から血を吐くような泣き声をたてて。

家が泣いている。

「ちいさいおうち」という絵本があります。

息子が小さな頃、よく読み聞かせたお気に入りの1冊。

題名と同じように正方形の小さな絵本。

1942年アメリカの絵本作家、バージニア・リー・バートンが書いた作品で、

日本では石田桃子による翻訳が1954年に出版されました。

半世紀以上も読み継がれている名作です。

静かな田舎にちいさいおうちがたっていました。

やがてまわりに工場ができ、高層ビルがたち、町はにぎやかになり、

もう白いヒナギクが咲き乱れる景色も見られない。

「もう いつはるがきて、なつがきたのか、

いつがあきで、いつがふゆなのか わからない」

そんなある日、ある女の人がちいさいおうちを救いだしてくれて・・・。

そんなお話です。

駐車場の向こうのクリーム色の小さな家も

「ちいさいおうち」のひとつだったのかもしれません。

小さなお庭を眺めて静かに暮らしていたおうちのそばに

ある日、大きなマンションが建ち、大きな駐車場ができ、

色とりどりの車が出たり入ったりするようになり、

近くにはお洒落なショッピングセンターもできて、

遠くの街から人や車がずいぶんとやってくるようになった。

マンションの住人である私よりずっと前から、ここに暮らしていたおうちには

この街の変わりようはどんなふうに映っていたのでしょうか。

「ちいさいおうち」目線で街を眺めてみて、はじめて気づくことがあります。

家が泣いていた。

もっともっと、ここに建っていたかった?

かつて家の中で聞えていた家族の笑い声が恋しかった?

ひっそりした住宅地だった頃が懐かしかった?

人々の笑顔も涙も抱擁も喧嘩も別離も仲直りも

みんなみんな黙って見守ってきた家には、魂が宿る。

役割を終えて、姿を消そうとする時、家が泣いたっておかしくない。

絵本のちいさいおうちは、

かつてこの家で育った子供の子孫である女の人によって

静かな田舎にお引っ越しをして、また幸せに暮らします。

クリーム色のおうちの解体された木材も

上手にリサイクルされて、また生まれ変われますように。

また、どこかで

「お日さまを みることができ、

お月さまや、ほしも、みられます」ように。

さよなら。

クリーム色のちいさいおうち。

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(写真は)

久高島の小さな赤瓦のちいさなおうち。

門と母屋の間に設けられた屏風(ひんぷん)も

強烈な陽光と風雨に耐え、家と人々を災いから守り続けている。

家の数だけ、おうちの魂がある。

おうちが笑ってくれるように、

お掃除はさぼらないようにしよう。