そして逃避行
自分の誕生日。
家族の誰も覚えてもいない。
もちろん花もケーキもカードもくれはしないだろう。
だから自分でレストランを予約して
ちょっと派手かもしれないけど新しい花柄のチュニックを着て
めんどくさがる家族と出かけようとしたら、
夫と息子が当然のように言う。
「お母さんが車、運転してよ、楽だから、その方が」。
こんな瞬間、女は、逃避行したくなるのだ。
バイバイ、日常。
桐野夏生の最新刊「だから荒野」は
こんな情景で小説が始まります。
平凡な主婦が逃避行したくなる心理を、
いつもながら、ひりひりするリアルさ、疾走感あふれる筆致で描きだす。
みんな見ないふり、気づかないふりして
「ふた」している心の奥底の乾き、かさつき。
読んでいて、はらはらする、どきどきする。
自分の心の中のむしるつもりのないかさぶたを
思いきりよく引っぺがされたような、
そんな予期しない傷みに驚きながらも、
ページをめくる手を止められない。
桐野夏生。
あなたはやはりカッコいい。
女は貯金性の生き物です。
日常の不満やストレスを少しずつ少しずつ積み立て貯金のように貯めていく。
去年の誕生日、その前の誕生日も誰も覚えていなかった。
毎日作るお弁当、誰もごちそうさんって言ってくれなかった。
駅まで車で送ることがいつの間にか当たり前になって
マイカーはママのタクシー「ママタク」と化していった。
小説の主人公の不満はこうしてけっこうな積立貯金になっていきます。
はたから見れば、郊外の一軒家に住む幸福な主婦に見えても
心の中は暴発寸前。
しかも怖いことに、本人すら、そのことに気づいていない。
しようがないってあきらめているから。
家族なんてこんなものだろうし、そんな家族しか作れなかった自分なんだからと。
しかし、自分の誕生日の夜、レストランの席で、
それは突然に、自分でも予期せず、「結界」が崩れる。
日常と非日常をかろうじて隔てていた、みえない「結界」が。
彼女は限度額いっぱいになっていた不満貯金を一気に引き出し、
そして逃避行。
ママタクのキーひとつをひっつかみ、トートバッグを手に、
オンナ一人旅に出る。
そんな思いきり良すぎる(笑い)「逃避行」を(あくまで)きっかけに
本日10月29日(火)のUHB「さあ!トークだよ」のテーマは
野宮範子プレゼンツ企画 月刊野宮ジャーナルVol.1
「オンナ一人旅~逃避行のススメ」
リラックスを求めて、自分へのご褒美、息抜きなどなど
女性の一人旅需要は増加の一途。
旅行業界も女性一人旅に注目、お一人様仕様の商品も続々。
憧れのクルーズだってお1人部屋設定を用意しているそうです。
毎日を楽しく生きるために、素敵な逃避行はいかが?
一人旅の達人、旅の専門家をゲストにお迎えし、
本日のスタジオは女性4人、グータンヌーボ的トークで
オンナ一人旅の魅力を語りたおします(笑)
ぜひぜひ!ご覧ください!
(写真は)
この春20数年ぶりのオンナ一人旅の目撃者のひとつ。
沖縄ロードワークス豊永さんオリジナルデザインの琉球張り子。
なんと「ゆるい」ケンタウロスでしょう。
「まあま、ねーさん、肩の力ぬいてさ、お乗りなさいな」。
赤白のケンタウロスにまたがって、
そして逃避行。
西表島のマングローブ林あたりまで、お願い♪



