お得な旅
秋のニューヨーク。
小さなスーパーマーケットで買い物をすませ、レジに並んでいると、
後ろの女性が話しかけてきた。
「素敵なブラウスね、シルク?」
私はちょっと得意げな笑顔で答える。
「ありがと。これ、ユニクロよ♪」
ふふふっ、何だかいい気分・・・・と、ここで目が覚めた。
夢の中の秋のニューヨークの一コマだった。
なんてお得な旅だろう。
秋の深まりとともに、旅の虫が騒ぎだしているのか、
ユニクロが世界第4位の衣料メーカーになったニュースを見たからか、
夏の終わりにゲットしたシルクブラウスの優秀さに満足していたからか、
さまざまな潜在意識がちょっと素敵な夢の旅をさせてくれました。
パスポートもチケットもトランクもいらないお得な旅。
なんとお金のかからない女だろうか(笑)。
しかも、その夢、せっかくの秋のニューヨークなのに、
セントラルパークでも5番街でもなく、下町の小さなマーケットでの買い物。
どうやら、お昼に鉄火丼を作ろうと、マグロのぶつ切りを買っている設定だった。
「ああ、けっこういいマグロがあるじゃない」とほくそえむ自分。
ものすごい生活感。
せっかくの夢なんだから、ティファニーの上の方の階で、
「ああ、けっこういいダイヤ、あるじゃない」くらいの夢を
みておけば良かった(笑)。
妙にリアルな夢のおかげで
あの秋のニューヨークの匂いを思い出しました。
20代後半、はじめての一人旅に選んだのが、ニューヨークでした。
秋の洋服しか持って行かなかったのに、到着したその日は真夏日の暑さ。
マンハッタンのど真ん中のホテルにチェックインした後、
あわてて夏服を買いに出かけたことを思い出します。
そうだった。
あの時入ったお店で買ったのが、リーズナブルなシルクのブラウスだった。
摩天楼で働く女性たちの毎日を支えるリアルクローズのお店だった。
20代の一人旅の途中でも、買えるお値段だった。
サイズもチェックして、クレジットカードで支払う。
今、必要な洋服に出会い、ちゃんと買えたことで、
巨大なこの街に受け入れられたような、
小さな自信がわいてきたことを思いだした。
秋、ニューヨーク、シルクのブラウス。
潜在意識のさらに底の方に大切にしまわれていた記憶。
あの秋のニューヨーク。
着いた日は真夏日だったのに、
帰る日には厚手の上着が欠かせない冷え込みだった。
前の日にブルーミングデールズで買ったスモーキーオレンジのウールジャケットが
枯葉舞いはじめたあの街によく似合っていた。
1週間の一人旅、いつの間にか堂々とお買い物できるようになった自分がいた。
20代のおしまい、今思えば、色んな不安と迷いのど真ん中だった。
でも、一人でこの街を歩ききった。
「きっと、私は、大丈夫」。
秋のニューヨーク。
若き自分に自信をくれた街。
もう一度行けるなら
やっぱり、秋がいい。
(写真は)
日本の秋は新そば。
ニューヨークの秋は、ポルチーニの香りがした。
世紀のテノール、パヴァロッティお気に入りというリストランテで
はじめて食べたポルチーニのステーキ。
その大きさと香りに驚いていると、ハンサムなウェイターさんが、
「あなたの座っているそのお席に
先週、パヴァロッティが座ってましたよ」とウィンクした。
本当か?リップサービスか?
ニューヨークの魔法。



