鯛焼きとプリン
「鯛焼きと、プリン・・・」。
見知らぬ訪問客が置いていった手土産。
その奇妙な取り合わせになぜか胸騒ぎを覚える美しい新妻。
さすが、大石静の脚本、女のリアルをさらりとえぐりだす。
またまた目が離せない、NHKの夜メロ枠。
火曜夜10時のドラマ10「ガラスの家」のワンシーンであります。
少女の頃に航空機事故で両親を亡くした女性が
同じ事故で妻を失った財務省エリート(主計局長)の若き後妻として結婚、
暖炉のある重厚な家の主婦となります。
その家には同じく財務省の若き官僚である長男と司法試験浪人中の次男が。
三人の男家族にとって、彼女は「美しき魔物」だった。
長男はいつしか彼女に惹かれ、夫は嫉妬の炎で静かに壊れていく。
ガラスの家のように、すべてが、壊れていく・・・
美しき魔物は井川遥、長男が斉藤工、適役過ぎる。
夜メロである。だから、はまる。
「鯛焼きとプリン」は
夫の昔の愛人が新妻へのあてつけに寄こした手土産でした。
妻を失ったあの人を支えてきたのは、私よ。
二人の息子が小さな頃から、世話をまかされ、尽してきたのも、私。
好物だって、何だって、知ってるんだから。
ここの鯛焼きとここのプリンじゃなきゃ、だめなんだから。
新参者のあなたに、何がわかるのかしら。この家のこと。
そう心の中で呪詛し、顔はにっこりと差し出す「鯛焼きとプリン」。
怖い。怖すぎて、鯛焼きが喉に詰まる。
女性脚本家の怖さは、こうしたデティールに宿ります。
結婚できないと知りつつ、長い年月を捧げた男が新妻を迎えた。
自分が座れなかったあの家の主婦の座に別の女が収まっている。
白昼、正面玄関を堂々とピンポンして、お祝いを述べて、手渡す手土産。
何でも良いわけがない。
そこらの焼き菓子や羊羹ではだめなのだ。
平和な日常にざらりとした何かを残す、砂粒みたいな違和感が込められた、
そう、どこか奇妙な取り合わせでなければならない。
意味がわかるまでに、時間がかかる、遅延性の毒のような。
そんな怖い手土産が、「鯛焼きとプリン」。
女が手土産ひとつにあれこれと悩むのはよくある風景、
脚本家はただそれを漫然と眺めてはいない。
こんな怖いお話になる。
鯛焼きとプリン。
両方は、重すぎる。
別々に食べた方が
身のためかもしれない(笑)
(写真は)
鯛焼き・・・型の箸置き。
怪しい女の手土産ではありません(笑)
それにしても、ドラマ中の井川遥、リアルな魅力がたまらない。
洗面後のすっぴん顔、ざっくりしたまとめ髪のおくれ毛、
ワイン飲み過ぎて、寝ぼけて長男の部屋で眠ってしまうちょっとしただらしなさ。
そう、美しいんだけど、ちょっと、だらしない。
みだらというのではく、ちょっと、だらしない危うい魅力。
こういう女を恋敵に回すと、厄介だ。
ね?

