淋しい梨
梨を食べると、なぜだか少し悲しくなる。
甘く冷たく透き通った歯触り。
しゃりっと噛みしめた瞬間になぜだか淋しくなる。
賑やかで華やかな季節が本当に去ってしまったことを知る。
「夏はとっくに終わったよ。
さあ、秋だよ、冬が来るよ。準備はいい?」
梨は、夏女を観念させる果物なのであります。
お盆のあたりから姿を見せ始め、
お月見や秋のお彼岸にも欠かせない秋の果物、梨。
同じ秋の果物でも、ぶどうは、食べてもあまり悲しくならない。
たわわに実った甘い房は
実りの秋、豊醸のイメージさえわいてきます。
しかし、梨は悲しい、淋しい、せつない。
しゃりっ。
歯に沁み入るひんやりした甘さ。
小さな虫歯を見つられたような、はっとする甘さと冷たさ。
夏の思い出に浸って、いつまでもふわふわしなさんな。
小さくたしなめられたような、そんな気がするのは私だけだろうか。
和梨には、そんな冷徹な潔さを感じますが、
これが洋梨になると、まったくないのも、面白い。
パートレット、ラ・フランス・・・
もぎたてではなく、追熟させて味わう洋梨たちが
食卓テーブルの上で日一日と熟していくのを待つのは秋の楽しみのひとつ。
ラ・フランスを食べても、悲しくはならない。
とろりと下にまとわりつくような食感は官能的ですらあります。
手土産に北海道産の真っ赤な洋梨を頂きました。
リンゴのように赤い皮の洋梨。
スペインの陽気なお皿の上に置いて眺めてみます。
美術の時間の静物画の課題にぴったりの構図であります。
夏の終わりをきっぱり告げる和梨と
成長を止め、静かに成熟する洋梨。
人生の秋をどう過ごすか、
秋の果物に静かに問いかけられているような、
雨の三連休、朝から、ちょいと物想う、秋です。
「梨むくや 甘き雫の 刃をたるる」
子規
(写真は)
真っ赤な洋梨。
うっかりすると、熟し過ぎてしまう。
成熟する美女は、扱いが難しい(笑)

