月の橋

まさか・・・

これが、あの、渡月橋・・・?

テレビ中継の画像に目を疑いました。

京都の観光名所、嵐山の渡月橋が濁流に飲み込まれそうになってます。

日本列島を直撃した台風18号、自然がもたらす爆発的破壊力に

ただ、呆然と見つめるしかありませんでした。

学生時代から、もう何度となく訪れた大好きな場所。

四条大宮駅から京福電鉄の嵐山電車「嵐電」に乗って、コトコトコトコト。

途中で太秦の映画村に寄ってみたり、

広隆寺のイケメン弥勒菩薩さまにご挨拶したり、

そうこうしているうちに嵐山駅に到着。

春は桜のトンネル、夏は目に鮮やかな青葉、

ことに錦秋の渡月橋越しの嵐山はまさに絶景だった。

橋の下の桂川はいつもいつも穏やかで、静かなせせらぎが滑るように流れていて、

その川面は、橋から身を乗り出して見ても、ずっとずっと下の方にあった。

桂川があんなに激しく暴れるなんて想像もつかなかった。

「かつて経験したことのない」規模の災害が起こる恐れがあるとして

京都など3府県に昨日朝「大雨特別警報」が出されました。

「数十年に一度」レベルの災害を想定、8月30日に運用されたばかりですが、

早くも現実になったのです。

想像もしない、想定外の、かつて経験したことのない災害、

「数十年に一度」というのは、数十年待ってからやってくるわけではなく、

いつ何時発生するかわからないということなんだ。

荒れ狂う桂川が、橋げたごと持って行かれそうな渡月橋が

身を持って教えてくれたような気がします。

桂川沿いの旅館やお店も床上まで浸水し、

川のたもとには転覆した屋形舟が無残な姿で打ち上げられています。

秋の三連休、京都の旅を楽しんでいた観光客たちは

舟遊びするはずだったボートで避難するという思いもよらない休日に。

小さな和菓子屋さんの作業場も水浸し。

職人さんが白い上っ張りを泥で汚しながら、

懸命にざらめや餅米などの大事な材料を水につからないよう、

作業台の上に引き上げていました。

風情あふれる美しい京都の和菓子も危機にさらされたのです。

春の渡月橋。

穏やかな桂川を眺めながら、名物の桜餅を頬張る幸せ。

秋の渡月橋。

ぽっかり浮かぶ美しい名月が川面にもうひとつ。

古人は水面に映る月を愛でつつ一献傾けたもの。

そんな至福の時は自然のご機嫌しだいだったのですね。

いつもにこにこ微笑んでいる人が爆発的に怒るとものすごく怖い。

めったに怒らないだけに、その怒りに息をのむ。

桂川も鴨川も怒ることなんてないと、安心しきっていた。

忘れていた。

千年の都も生きている地球の上にあるということを。

ことに最近、気象、いや気性が激しさを増す地球の一部だということを。

いつもは優しいご近所の身近な川のせせらぎもいつ豹変するか、わからない。

かつて経験したことのない気象状況は

いつ、どこで、やってくるか、わからない。

台風一過の秋空の下、

気を引き締める。

京都の月の橋。

いつもの秋の渡月橋に早く戻りますように。

(写真は)

かつて京都で手に入れた清水焼の鉢。

鳥獣戯画の図柄が楽しい。

あらためて眺めて見る。

薄を手にした兎が、桜を持った猿を追いかけている。

秋が春を追いやる季節の移ろいをユーモラスに表現するセンスに脱帽。

無性に京都に行きたくなった。

桂川をなだめに行きたくなった。