フロッタージュの記憶
きょうは「白露」。
草に降りる露が白く見える季節。
朝晩は長袖なしではひんやりする気温になってきました。
空気も澄んで、月が美しく見える時季。
露は「月の雫」ともたとえられています。
時には「涙」にも・・・。
「秋だからカルチャーしましょ」
白露の7日(土)のAIR-G’「野宮的コフレ」のテーマはちょっと文化の香り。
「琉球切手」や「居酒屋文化論」そして「フロッタージュ」のお話をしました。
ご存知ですか。
「フロッタージュ」。
フランス語の「こすり取る」に由来する美術技法のこと。
木や石や硬貨など凸凹した硬い物の上に紙を置いて、鉛筆やクレヨンでこすると
その凸凹が模様となって浮き出てきます。
子供の頃、ノートの間に10円玉をはさんで鉛筆でこすったりしましたよね。
あれがフロッタージュ。
シュールレアリズムで盛んに用いられた技法ですが、
東洋の拓本もフロッタージュのひとつといえます。
我が家のリビングの中心に1枚のフロッタージュが飾られています。
黒い紙に金色のクレヨンで浮かび上がった女性の姿。
「ISABEL 1ST CONTESS ESSEX 1483」という刻銘が読み取れます。
仕事仲間のカメラマンがイギリス取材の合間を縫って、
独身時代の引っ越し祝いに現地でこすり取ってきてくれた労作、大作です。
リバプールにある古い墓所。
彼女は現地の人々に慕われている存在らしく、
お墓のレリーフをフロッタージュする姿が絶えなかったそうです。
15世紀にエセックスに生きた女性の人生が丹念にうつし取られて
21世紀の東洋の島国の北の街のささやかなリビングで静かに微笑んでいる。
フロッタージュとは
時空を超えて、大切な記憶をうつしとる手段でもあるようです。
ヒロシマやフクシマの記憶をフロッタージュで留めようという
ワークショップも行われているのもよくわかります。
忘れないで。
忘れないよ。
紙一枚を挟んで、「その時」と「今」が向き合う時間。
考えてみれば、人生ほど、フロッタージュに向いている素材はありません。
歩いて、転んで、立ち上がって・・・
凸凹の繰り返し。
いつか誰かが気まぐれに私の人生をフロッタージュしてくれるかもしれない。
意外に味のある美しい模様が浮かび上がるように
きょう一日を丁寧に生きてみよう。
「LIVERPOOL 1987」
カメラマンがロケの時間を削って(笑)うつし取ってきてくれた時から
気がつけば、四半世紀の時が過ぎていました。
エセックスの美女も
いつのまにか家族の一員となっています。
(写真は)
15世紀のイングランドからのお客人。
もうかなりの長期逗留です。
我が家の食卓の笑いも喧嘩もすべてご存知。
けっこう、飽きないらしく、これからもずっとご滞在の予定(笑)。

