想像の朝
8月15日。
札幌は蒸し暑い朝を迎えました。
68年前の朝はどんなお天気でどんな気温だったのでしょうか。
爽やかなお天気キャスターが早朝のテレビ画面から
予想最高気温や降水確率を笑顔で教えてくれる朝ではなかったことは
想像できます。
68回目の終戦記念日。
あの夏のことを想像します。
何が起きて、
どれほどの希望や未来が失われたかを想像します。
朝のしじまで
石内都さんの写真集「ひろしま」をめくり、
夏の初めに訪れた糸満の平和祈念公園のしおりを開く。
一瞬の閃光で主を失った小花模様のワンピースの写真と
平和の礎に刻まれた24万の名前がつながっていきます。
沖縄戦最初の上陸地、座間味村阿嘉島で採取された火と
広島の「平和の火」と長崎の「誓いの火」が合火された「平和の火」が
どこまでも青い南国の海にむかって静かに揺れていました。
広島、長崎、そして沖縄。
そして日本中の町で村で。
何万、何十万の命が失われた戦争があったことは知っています。
でもかの地を訪れてみると、
何万、何十万という数字では描けない大切なことを教えてくれます。
ここで命を落としたのは何十万分の一ではなく、
一分の一の命だったということ。
その朝に身につけたのは
母が手作りした小花模様の夏服か
洗いざらしの白いシャツか
藍の木綿の作業着か。
「ああ、きょうも暑くなるな」と、
空を見上げていただろうこと。
朝起きて、空を見て、身づくろいをする。
自分と変わらない一分の一の暮らしだったこと。
国と国が戦っていたこと以外は。
摩文仁の丘に広がる平和記念公園。
沖縄戦のことを後世に伝える展示ゾーンのおしまいは
暗い館内から一気に目の前に広がるガラス越しの真っ青な海です。
数々の展示資料の最終ゴールは泣きたくなるほど美しい青い海。
お説教も声高な叫びもなく、
ただただ美しい海が待ち受けているのです。
想像してみる。
68年前に起きたことを。
あの夏に暮らしていた人々の一分の一の朝を。
小花模様の夏服を着た女の子は
誰かの妻となり母となり孫を抱くはずだったかもしれないのだ。
断たれた夏を想像する。
札幌の予想最高気温は30℃。
北海道にしては蒸し暑い8月15日になりそうです。
(写真は)
摩文二の丘から望む海。
空と海が溶けあう。
68年前、鉄の暴風が吹き荒れたのと同じ海は静かで青かった。
言葉もなく、5分は立ちつくしていた。

