ボルサリーノ恋情

小津安二郎監督の白シャツ。

キャッツアイ。

浴衣。

今日8月10日(土)のAIR-G’「野宮的コフレ」のテーマは

「夏の装い」。

白いピケ織りの帽子と長袖シャツがトレードマークだった小津監督の着こなしは

腕まくりして働く男たちの潔さと健全な色気の理想形です。

猫の目のようなキャッツアイ型サングラスは

映画「麗しのサブリナ」のヘップバーンを気取れます。

そして「東京物語」のワンシーンのような夏の終わりの浴衣姿。

残り少ない北国の暑い季節、

夏の装いを楽しみ尽したいものです。

この夏、恋に落ちました。

出会いは那覇の小さな帽子専門店。

パリの街角かミラノの裏通りにありそうなお洒落で小粋な店内には

中折れ帽に女優帽、キャップにキャスケット・・・

かぶってみたい帽子が百花繚乱。

東京の超有名帽子店で働いていたおヒゲがキュートな若き店主が

念願かなって故郷に開いた帽子のお城です。

「帽子オタク」を自認する彼の蘊蓄、知識は半端なく、

私がかぶっていた白ハットを見るなり、

「5ミリ詰めましょう」と裏側にスポンジをくるり、

見事にジャストフィッティングに調整してくれました。

「ぴったり、これで風が吹いても飛ばないわ~」と鏡に向かう視線の向こう、

ハンサムな端正な白い帽子が佇んでいます。

あ・・・ボルサリーノ・・・。

一瞬でひと夏の恋に落ちました。

1857年創業のイタリアの帽子メーカー「ボルサリーノ」。

その名はフランス映画のタイトルにもなったほど、

中折れのソフト帽やパナマ帽は世界中の洒落者を虜にし続けています。

サッカーのキングカズご愛用の帽子としてもおなじみですが、

最近はハンサムで男前なフォルムの魅力にはまる女性も多く、

私も雑誌で見ては「素敵・・・」とため息をついていたのですが、

実物を見てしまった・・・。

しかもセレクトショップにひとつだけ鎮座しているボルサリーノではない。

最高級の天然素材で作られた本物のパナマ帽がサイズ違いでずらり。

しかもつばのサイズも2種類揃っている。

どこかの外務大臣がG7かなんかに行ったときにかぶっていたの同じタイプです。

「外国メディアが、ギャングか?って言ってましたよね」と言う私に

おヒゲ店主は一刀両断、

「つばのサイズがお顔とボディに合ってないんです」

「でも、あの大きさが、ご本人のお好みなんでしょう」。

ギャングに見えたのは決して帽子のせいではないようだ(笑)

ヘミングウェイがかぶってたみたいな

白いボルサリーノのパナマ帽。

そっと頭に載せてみる。

ああ・・・もう・・・だめ・・・

あなたになんか出会んじゃなかった。

ひと夏の恋では済まなくなる。

素敵過ぎます。

ボルサリーノ。

困ったことに白のパナマ帽のそばには

ラビットフェルトのボルサリーノが・・・。

しかも私の大好きなグレーがかったカーキ色。

パナマ帽の熱い余韻を残した頭に

これまた、そっと載せてみる。

ああ・・・私って、なんて恋多き女。

ひと夏の恋の清算も終わらないうちに

ひと冬の恋に落ちてしまった。

罪作りなボルサリーノ。

白い彼もグレーカーキの彼も

お値段も罪作りだった(笑)

夏のバカンスで衝動買いするお値段ではない。

一目惚れの恋に身を任せるには、人生を重ね過ぎた(笑)。

そのリスクと代償の大きさは財政破たんの引き金になる。

ハンサムな横顔はひと夏の思い出に

そっと胸に抱きしめて

南国の帽子屋さんを後にする。

ボルサリーノ。

ひと夏の恋で終わるだろうか。

ハンサムな横顔を忘れられるだろうか。

頭の片隅でボルサリーノ貯金を企みはじめる自分に気づく。

大人の恋にはコストがかかるのです。

(写真は)

南国帽子店の若き店主。

端正なパナマ帽を「俺様仕様」(笑)に加工中。

帽子を成形するスチーム機で蒸気を当てながら

わざとつばをくたくたにしていく。

使い込んだ感、こなれ感が「俺のボルサリーノ」になる。

決してギャングにはならない。