指輪物語
運命の指輪に出会ってしまいました。
七つの幸せの房で飾られた美しい指輪。
20日(土)AIR-G’「野宮的コフレ」で
「この指輪のためだけに、また旅したい」とお話したもの。
「房指輪」。
沖縄で古くから受け継がれてきた特別な指輪。
昔、琉球士族の女性が婚礼の儀式の時に身につけました。
「来世まで守られ、幸せでありますように」と
嫁ぐ娘に母が贈ったと言われています。
かつて首里には、
琉球王のお抱え職人たちが暮らす町が広がっていました。
美しく細やかな品々を作りだす金細工職人も大勢暮らしていましたが、
今では、7代目となる又吉健次郎さんひとりとなってしまいました。
現在、房指輪を作れるのは、又吉さんと弟子の喜捨場智子さんの二人だけ。
私が那覇国際通りの裏道にある小さなセレクトショップで偶然出会ったのが
喜捨場智子さんが作った房指輪です。
大切に奥にしまわれていた木の箱をそっと開けると・・・
なんと・・・
なんて・・・美しい・・・
銀細工の精緻な飾りがいくつもたわわに。
世にこれほど、幸せへの祈りが込められた指輪があるだろうか。
感動のため息で言葉がふさがってしまいました。
ただ、声もなく、その美しい指輪を見つめます。
小さな飾りには、すべて意味があります。
「魚」は「食べ物に恵まれるように」
「蝶」は「楽園ニライカナイの使者」
「灯明」は「心に明るい灯火を」
「桃」は「子孫繁栄」
「扇」は「末広がりの幸せ」
「葉」は「衣服に恵まれるように」
「亀」は「長寿」
これら伝統的な七房に、喜捨場さんの房指輪にはさらに
「富貴の象徴」の「牡丹」
「天下泰平」の「象」
「平和の象徴」の「鳩」
「幸せを呼び魔を除ける」「こうもり」の
日本や世界で使われている4つの吉祥文様の房が加えられています。
「どうぞ、指につけてみて下さい」「え・・・いいんですか」
お店の人の言葉に甘えて、
そっと左手の薬指にはめてみます。
ああ・・・
もう・・・
だめです・・・
美しすぎる・・・
幸せへの祈りが薬指を通して全身の血管に行きわたる。
この指輪ひとつだけで、私は生きていける。
見えない何かに見守られている温かな感覚に包まれ、
不思議なパワーがみなぎってくるような気がする。
生まれ育ち、住み慣れた家を出て嫁ぐ娘にとって
婚礼は「裸一貫」での出発。
大きな不安と期待が入り混じっていたことでしょう。
そんな花嫁の心にそっと寄り添う房指輪。
小さな指輪は何よりも心強い存在だったに違いありません。
しゃらん・・・しゃらん・・・
銀色の小さな房が触れ合ってたてるかそけき音に
どれほど心が癒されたことか。
現代に蘇る琉球伝統の房指輪。
決して手軽な値段ではありませんが、
ダイアモンドの指輪に比べれば、手に入らない値段ではありません。
でも、「これ、下さい」とは、簡単には私は言えなかった。
もっと、じっくりと年月を経て、
幸せの意味をかみしめて、私なりの毎日を積み重ねて、
そして、もう一度、ご縁があったら、この指輪を買おう。
いつの日かわからないけど、
今は簡単に手に入れてはいけないような気がしました。
それほど深く長い祈りが込められた特別な指輪。
いつか、
遠い旅路を経てまでも
出会いたい「何か」がある。
それだけで、
今はじゅうぶん幸せだ。
(写真は)
琉球伝統の「房指輪」。
いつの日か
この指輪一つだけで身を飾ってみたい。
シンプルな黒のドレスに、アクセサリーは銀色の房指輪ひとつだけ。
そんな装いの似合う女性を目指して、
さあさ、女磨き、あきらめずに精進しよう(笑)
そうそう、喜捨場さんの房指輪には
伝統的な七房+4つの吉祥文様に加えて、
もうひとつだけ小さなモチーフが加えられています。
それは・・・「花」。
「永遠の美」をあらわす「花」。
作り手が嫁ぐ花嫁に贈るお祝いのメッセージ・・・かもしれません。

